田中森一著「反転」(幻冬舎)
田中森一の「反転」(幻冬舎・平成19年6月25日第一刷)を読んだ。幻冬舎は本書の広告を日経新聞第2面下段一杯に数回出すなど宣伝に力を入れている。
著者は,元大阪,東京地検特捜部の検事で,後に弁護士に転身し,現在も弁護士であるが詐欺罪で起訴され,1,2審で実刑判決を受け,現在上告中である。
著者は平戸島の貧しい漁民の家に生まれ,高校は定時制,大学もアルバイトなどでいわゆる苦学し,在学中,司法試験に合格,修習終了後,検事に任官,大阪,東京地検特捜部で著名事件の捜査に関与したが,自己が本気で捜査している事件を何度か上司に潰されたために検事を辞し,弁護士に転身した。
本書は400ページを超えるかなり長いものであり,前半は生い立ち,検事としての活躍,後半は弁護士になってからの活躍ぶりが描かれている。
僕も著者と同じように定時制高校出身,検事を経て弁護士になった経歴は同じであるが,著者ほどの活躍の足元にも及ばない。
しかし,似た経歴を持つがために興味を持って読めた部分が多い。
本書は,読み物としては,特捜部検事の捜査,上司との事件処理を巡っての軋轢,弁護士として著名実業家や政治家,暴力団関係者との関係がかなり具体的に語られているのでそれらの部分は誰にとっても興味深いはずであるから,面白く読めるだろうと思う。
しかし,著者はそのときの仕事に渾身の力を込めてぶっつかっているが,哲学を持っているとは思えない。
その故に本書は一応興味を持って読めるがそれ以上のものではないというのが僕の感想である。
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